その他

高度な戦術 「カードカウンティング」

この 「カードカウンティング」 は熟練者でない限り覚える必要はなく、また実行も初心者にはむずかしい。したがって一般のプレーヤーはこの項を無視してかまわない。

この 「カードカウンティング」 とは、本格派の熟練プレーヤーがよくやる戦術で、すでに使用された (すでに見えてしまった) カードを記憶し、まだ未使用の山の中にどのようなカードがどれほど残されているかを読む高等戦術である。
この戦術でプレーヤーが具体的に知りたいことは、未使用のカードの山に絵札や Ace などの強いカードがどれだけ多く残されているか、ということである。これらを予測するための 「カードカウンティング法」 にはさまざまな流派が存在するが、最も一般的なのが以下に紹介する方法だ。

出てしまったカードが Ace および 10や絵札ならば、1枚につき -1点、7、8、9 ならばゼロ点、2、3、4、5、6 は +1点とし、それらをプレーの最中に刻々と合計していくという手法である。そしてその合計の数値がプラスの値ならばプレーヤー側に有利な 「好機」 と解釈し賭金を多めに張り、逆にマイナスならば不利な状況と判断し賭金を減らす。ではなぜそのように考えることができるのか。

Ace が山の中に多い状況は明らかにプレーヤー側に有利に働く。なぜならブラックジャックが完成する確率はプレーヤー側もディーラー側も常に同じだが、プレーヤー側に完成した場合は 1.5倍もらえるからだ。(最近は不景気でカジノ側の経営が苦しいのか、1デックや 2デックのテーブルでは、1.2倍が常識になりつつある)
また絵札などが山に多く残されている状況では、やはりプレーヤー側が有利になる。なぜなら 17 までは必ずヒットしなければならないディーラーにとってバーストの確率が高くなるばかりか、絵札が多いということはブラックジャックもできやすくなり、さらにプレーヤー側にだけ認められているダブルダウンが効果的に決まりやすくなるからだ。

逆に小さいカードが山に多く残っている場合はディーラーが有利になる。なぜなら、16までは必ずヒットしなければならないディーラーにとって、バーストしにくくなるからだ。またプレーヤー側にとってはダブルダウンの効果が薄れる。

これがカードカウンティング戦術の基本原理だが、この戦術は当然のことながら デック数が少ないテーブルで実行した方が効果は大きい。それは当然のことで、たとえば 1デックで Ace がすでに 4枚出てしまったことがわかれば残された山の中に Ace は存在しないことがわかるが、6デックの場合そうはいかない。また、上記のプラス、マイナスのポイントの変動に対する、残されたカードへの影響は、デック数が少ないほど大きい。したがってカードカウンティングは少ないデック数のテーブルで行なったほうが効果的だ。

カードカウンティングを本格的に実行していると必ずカジノ側にバレるものである。バレた場合、カジノ側はそれに対抗してシャッフルを早めに入れるようピットボスなどがディーラーに指示する。もちろんディーラー自身がそれに気づき、シャッフルを早めることもある。たとえば、2デックでも 1プレイごとにシャッフルされてしまうことは珍しいことではない。
ではなぜバレてしまうのか。それは実に簡単なことで、賭金の額に不自然な強弱が見られるようになるからだ。それとプレーヤーの視線があわただしく動き、他人がヒットしたカードや流されていくカードにまで視線が向けられるようになるので簡単にバレる。 ちなみにカードカウンティングを行なっている者のプレーを拒否する権利をカジノ側は有しており、プレーの続行を断られることも少なくない。
そのへんの様子は、2008年に公開されたロバート・ルケティック監督の映画 「ラスベガスをぶっつぶせ」 (英語版の題名 「21」) を見るとよくわかるはずだ。

いずれにせよ、山に残されているカードの傾向によって有利不利のバラツキが存在してくるということだけはわかっておいて損はない。
とは言っても、一般のプレーヤーがこれを実行し、効果的に賭金を上下されることはかなりむずかしく、得られる効果の大きさの割に苦労が多いのも事実。計算に夢中になるあまり、プレー自体を楽しめなくなってしまうようであれば本末転倒なので、本格的なプレーヤー以外はあまりこだわらないほうがいいだろう。

Mid Entry の禁止

カードカウンター (カードカウンティング戦術を実行しているプレーヤー) の活動を防ぐ目的から、多くのカジノでは、1デックや 2デックのテーブルにおいて、この Mid Entry を禁止している。(Mid-Deck Entry、Mid-Shoe Entry などとも呼ばれることもある)

Mid Entry とは、シャッフルとシャッフルの間のタイミングでプレーに参加することで、つまり、シャッフル終了後の最初のプレーから参加せずに、数回プレーが進行した状態で、その次のシャッフルの前に途中からプレーに参加することを意味する。当然カウンティング行為になるわけだが、自分がプレーに参加する前にそれを行なうわけで、いわば "見学型カードカウンティング" ということになる。

1デックや 2デックなど、使用カードが少ないテーブルの場合、この Mid Entry を認めてしまうと、プレーせずにゲームの進行だけを見学して、残りの山 (未使用カード) の中に Ace や絵札などの有利なカードが多く残っている状態になった時だけゲームに参加することができてしまい、それではアンフェアだろうということで、これを禁じるカジノが少なくない。多くの場合、そのことは各テーブルに掲示されている。
なお、Mid Entry を禁止する代りに、Mid-Entry するプレーヤーに対してのみ、賭け金の上限を極端に低く設定しているカジノもある。

Penetration

どこのカジノもカードカウンターの存在には神経をとがらせている。多くの場合その対抗策は 「早めのシャッフル」、つまり 「浅めの Penetration」 だ。

Penetration とは、動詞 Penetrate の名詞形で、一般の単語としては、浸透する、しみ込む、貫通する、突き進むようなことを意味するが、カジノ用語としてはカットの深さ、つまりカードゲームにおけるカードの使用量のことを意味する。
ようするに、全体のカードの枚数に対して、次のシャッフルまでに何枚程度までゲームに使用するかを意味し、たとえば 6デック(52枚 X 6) でプレーしている場合において「Penetration 80%」といえば、約250枚使用した付近で次のシャッフルを行なうことになる。

当然のことながらこの Penetration は、カードカウンターにとって重要な意味を持つ。極端なたとえになるが、たとえば 1デックで 「Penetration 100%」 の場合 (そんなことはあり得ないが)、つまり最後の1枚までプレーに使用する場合、その最後の1枚は、それまでに出現した 51枚をすべて記憶しておけば確実に予測することができる。
また、48枚までプレーした段階で、絵札(10も含めて) がすべて出尽くしていたことが確認できれば、残りの4枚に絵札は存在しないことがわかり、ディーラーのカードが Ace でも絶対にインシュランスを掛ける必要がないことがわかる。
したがって、この Penetration が深くなればなるほど、カードカウンターにとっては、次のカードを予測しやすくなり有利になるわけだが、実際にはカジノ側はそれを防ぐためにこの量をあまり深く設定していない。つまり浅めにカットを入れて早めのシャッフルを心がけている。
ただ、あまり浅くしてしまうと、シャッフルをひんぱんに行なうことになり、そのシャッフルに時間が取られる分だけ 1時間当たりのプレーの進行が遅くなり、収益に悪影響を及ぼしかねない。
したがって一般的には 6デックの場合、70~80% が普通といわれているが、警戒心の強いカジノや、カードカウンターがプレーしていると思われる場合などは、これが50% ぐらいになったりもする。1デックや2デックの場合は、プレーヤーの数によって現場のディーラーが臨機応変に対応することになるが (プレーヤーの数が多い場合、次のプレーで必要なカードの枚数が多くなるため、早めにシャッフルをしないとカードがたりなくなってしまう。結果的にプレーヤーの数が多い場合ほど Penetration は浅くなるのが普通)、やはり 80%を超えることは少ない。

とにかくカジノ側は Penetration の深さに細心の注意を払っているわけだが、最近はさらにその上を行く対策が施され始めている。エンドレスシャッフルマシンの導入だ。 ディーラーがシャッフルする代わりに、マシンにシャッフルさせるわけだが、ただ単にディーラーに代わってマシンがシャッフルするというだけのことではない。もっと深い意味がある。
エンドレスシャッフルマシンを導入しているテーブルにおいては、1ゲームごとに使い終わったカードをそのマシンに入れ、そのマシンがカードを常時シャッフルしながら、次のゲームで使うカードを選び出す。つまり、「終わり」 というか 「区切り」 がなく、カードカウンティングの戦略が意味を成さなくなるというわけだ。
これは、カジノ側がカードカウンターに対して有利な立場になるというだけでなく、シャッフルのためにゲームが中断することがなくなるため、結果として単位時間当たりのプレーの回数も増え、カジノにとっては一石二鳥の効果が期待できる。
カードカウンターのみならず、ディーラーの華麗なる手さばきによるシャッフルを楽しみにしている一般プレーヤーにとってもなんとも寂しい傾向といってよいだろう。

Basic Strategy (基本戦略チャート)

 ブラックジャックというゲームは、自分に 2枚のカードが配られ、なおかつディーラーのカードが 1枚見えている状態で、ヒットすべきかスタンドすべきか、あるいはダブルダウンすべきかスプリットすべきか判断するゲームだ。もちろんヒットしたカードの結果によってはさらに引き続き同じような決断を迫られる。  それぞれの決断場面において、数学的に最も有利な選択肢を一覧表にまとめたものがいわゆる Basic Strategy (基本戦略) と呼ばれるヒット&スタンドチャートだ。(このページの一番下に掲載)

 このチャートは、デック数の違い、ディーラー側における Soft-17 の際のルールの違い、サレンダールールの有無、スプリット後のダブルダウンが許されているかどうか、などの条件の違いによって微妙に異なってくるが、ラスベガスの主要ホテルでのプレーを想定する限り、それら条件がほぼ統一されているため、一つのチャートを覚えれば十分だろう。
 すなわちそれは、6デック、Soft-17 スタンド、サレンダーあり、ダブルダウンいつでもOK、という条件でのチャートということになる。もちろんラスベガスの主要ホテルでも 2デックで行われているテーブルがあったり、Soft-17 ヒットという場合もあるが、いくつものチャートを覚えるのは難しいばかりか、チャートの内容にほとんど違いがないので、プロのギャンブラーでもない限り無理していろいろ覚える必要はないだろう。

 以下に掲載されているのが、その覚えるべきチャートで、ちなみにこのチャートに従ってきちんとプレーした場合の数学的な勝率はディーラー側もプレーヤー側もほぼ互角、つまりカジノ側の有利性はほぼゼロになっている。もう少し数学的な表現をするならば、カジノ側の有利性 (ハウスアドバンテージ) は 1% にも満たないということで、これは、たとえばプレーヤーが毎回 $10 賭けて 100 回プレーしたとしても (つまり合計 $1000 賭けることになる)、カジノ側は $10 も勝てないことを意味する。
 したがって逆の言い方をすれば (プレーヤー側から見た言い方をすれば)、チャート通りにプレーしていれば、$10 を 100 回賭けても最終的には $10 も負けない可能性が高い、ということになる。これはもちろん平均的な数字であって、その時の運によって結果が多少変動することは言うまでもないが、ルーレットなどに比べると、この数字は圧倒的に条件がよいということを覚えておくべきだろう。
 ちなみに、赤か黒か、あるいは偶数か奇数か、に賭けていればほぼ半々の確率で勝てるような気がしてしまうルーレットだが、実際には "カジノ側の総取り" である "0" や "00" が 38回に 2回は出てしまい、カジノ側の有利性は 5.26% もある (プレーヤーが $100 賭けるとカジノ側は確実に $5.25 儲かる計算になる)。この 5.26% というルーレットのハウスアドバンテージはプレーヤー側にとって致命的な数字といってよいだろう。  したがってゲームの好き嫌いは無視して、本当に勝つことだけを考えた場合 (あるいは負けを最小限にすることを考えた場合)、ルーレットなどをやるよりはこのチャートに従ってブラックジャックをやった方がよいということになる。

■ プレー条件
Deck : 6
Soft-17: スタンド
Double: スプリット後もOK。
Surrender : 有り

■ チャートの見方
H : ヒット
ST : スタンド
D : ダブルダウン
SP : スプリット
SR : サレンダー

チップ

ここでいうチップとはカジノコインの CHIP ではなくディーラーに渡す謝礼の TIP のことである。勝たせてもらって席を離れる際は適当な額を TIP として渡たしたい。これは気持ちの問題なので金額に相場などはない。自分の財力や勝敗結果に応じて身分相応に渡せばよいだろう。

さて、「ディーラーにチップを渡した方が勝たせてもらえる」 というようなことを言う人がいる。

しかしそれはまったくのウソだ。ルール上そんなことはあり得ないことはここまでの説明を読んで頂ければおわかりいただけているはずだが、それでもそのような効果を期待してチップを渡したいという者はそれはそれでよいだろう。

さてそのチップの渡し方だが、大きく分けて 2つある。ひとつはごく普通に渡したい金額を直接渡す方式、そしてもうひとつは渡すべきチップの半額を次のゲームに賭け、勝ったら配当金も含めてすべてをディーラーに渡すという方式だ。

たとえば $10をチップとして渡したい場合、前者の方法ではただ単に $10を渡すだけだが、後者の方法の場合 $5を次のゲームに賭け、そのゲームに勝ったら配当金も含めその全額 (つまり $10) をディーラーに渡す。もし負けたらただ単にその賭金は消えていってしまい (もちろんカジノ側の収益になる)、ディーラーには何も入らない。つまり、「どうか勝たせてください。勝たせてくれればあなたにもチップが入りますよ」 というような願いを込めてのチップというわけである。
 この方式でそのチップ分の賭金をテーブルに置く際は、通常の賭金とは区別するためにそのチップ分の賭金はディーラー側にずらした位置に置くようにする。

なお余談になるが、せっかくお世話になったディーラーにチップを渡しても、それがそのディーラー個人の懐に直接入るわけではない。すべてのディーラーが受け取ったチップをあとでみんなで山分けにするのである。
理由は極めて単純明快だ。もしディーラー個人の懐に入れてもよいということになってしまうと、ある特定の客だけに特別多く払い戻すなどの不正行為の温床になりかねないからだ。また、チップをはずんでくれる客ばかりにディーラーが笑顔をふりまくようになっても困る。貧乏な客やケチな客ばかりがいるテーブルでの勤労意欲が低下してしまうのも問題だろう。さらに、どのディーラーも混雑している時間帯に仕事をしたいと思うようになり、公平な労働時間のシフトの管理が困難になってしまう。

ところでこの 「山分け方法」 にもいろいろ細かい規定があるようだ。たとえば、曜日によって客の混雑具合などが異なるため、出勤日の違いによる不公平が生じないよう 1週間分のチップをプールしてから山分けするなどいろいろそれなりの工夫がなされている。つまり、その 1週間における各自の実労時間に応じて比例配分されるというわけだ。 とにかく、自分が渡したチップの全額がそのディーラー個人の懐に直接入るわけではない、ということだけは頭に入れておこう。