クラップス概要

クラップスとは

クラップスはラスベガスのみならず世界中のカジノにおいて、ブラックジャック、ルーレットと並び最も広く行われているゲームのひとつである。

特にここラスベガスでは、クラップスのワイワイ騒ぎながらやる独特な雰囲気がアメリカ人気質に合っているのか、少なくともルーレットよりはるかに人気の高いゲームとなっている。

一方、これだけ多くの日本人がラスベガスを訪れるようになった今日においても、このクラップスを本格的に楽しんでいる日本人観光客は極めて少ない。

単独で黙々と遊ぶルーレットやブラックジャックと異なり、客同士がフレンドリーにワイワイ騒ぎながら楽しむこのクラップスこそ、国際化が叫ばれている今日の日本人に最も学んでほしいゲームのひとつである。

それと同時に、このクラップスがカジノゲームの中で 最も勝率の高い (期待値が高い) ゲームである (ごく特殊な条件下のビデオポーカーなどを除いて) ということも忘れてはならない。

ゲームの概要

クラップスは基本的にはサイコロの出る目を当てるというだけの極めて単純なゲームだ。

ブラックジャックのような 「ディーラーの手に対して各プレーヤーが個別に勝負する」という 「対戦型」 のゲームではなく、勝負はただ単にサイコロの目を当てたプレーヤーに対してカジノ側 (ホテル側) が払戻金を支払うというだけの単純な図式となっている。

そういう意味においてはルーレットとまったく同じスタイルということもできる。
一方、戦略性についてはブラックジャックとルーレットのまったく中間に位置していると言ってもよいだろう。

ブラックジャックにおいては、基本ルールや戦略を知っているのとそうでないのとでは明らかに勝敗の結果に差が生じてくるが、一方、ルーレットの場合は誰がどのような賭け方で勝負しようがすべて同じ期待値になるように配当倍率が設定されている。そのためルーレットでは確率論的な戦略や必勝法などはまったく存在せず、勝敗結果はすべてそのときの運だけで決まってしまう。クラップスはそのような両者のちょうど中間的な位置にあると言ってよい。

つまり運さえよければ戦略をほとんど知らなくても勝てる可能性は十分にあり、またルーレットほどすべての賭け方が同じ期待値に設定されているわけではないので、実情を知らないで賭けると損をする悪い賭け方や、使わないと損をする戦法があったりする。ただその知識の差による結果の差はブラックジャックほどではない

基本ルール

基本的にはただ単に次に振られるサイコロの目 (クラップスにおいては常に 2個のサイコロが使われる。

つまり 「サイコロの目」 とはその 2つのサイコロの目の合計のことを指す) を当てるという単純なゲームだが、その賭け方のバリエーションはかなり豊富で、またそれぞれの賭け方に対する配当倍率もバラエティーに富んでいる。

そのため初心者などからは、かなり取っつきにくいゲームのようにも見られがちだが、実際は非常に単純で、一度慣れてしまえばこれほどにぎやかで楽しいゲームはない。

ゲームの手順を簡単に説明すると、まず最初に各プレーヤーがそれぞれ好きな場所に賭金を置く。すぐにゲーム開始となりサイコロ 2個が投げ込まれる。この最初の第 1投目のことを 「カムアウトロール」 と呼び、カムアウトロール以降、第 2投、第 3投、第 4投と、次に 「7」 の目が出るまでゲームは続けられる。もちろん第 2投目で 7が出てしまえば、その時点でそのゲーム (正確にはシリーズという) は終了となる。その 「7の目が出てゲーム終了」 となるまでに各自あれこれと好きな目に賭けるのがクラップスというゲームの基本である。(つまり第 1投目以降でも賭金を新たに置くことができる)。

賭け方には豊富なバリエーションが存在しているものの、実戦において実際に賭けるべきスポット (確率論的に有利なスポット) の種類はごく限られており、このゲームは想像するよりはるかに簡単だ。
にもかかわらず、これまで多くの初心者 (特に日本人) に敬遠されてきた最大の理由は、一にも二にも良き解説書がなかったからではないだろうか。

これまで世に存在してきたほとんどすべての解説書は英語版であろうが日本語版であろうが 「基本的な一般論」 を何一つ説明することなく、いきなり冒頭から 「特殊な例外的な賭け方」 などを説明してきた。
 具体的に言うならば、実戦ではほとんど使うことのない 「ドントパス」 などを、最も大切な 「パスライン」 などと並行していきなり冒頭で説明したりしている。ドントパスとパスラインでは性格がまったく異なるため、初心者はクラップスというゲーム全体の総体的な流れや目標が何であるかを見失ってしまう。これでは初心者はただただ混乱するだけで、彼らにとってクラップスが難解なゲームと映ってしまうのも当然のことだろう。

さてさっそくそのクラップスのルールの一般論だが、初心者のためにあえてひとことでわかりやすく表現するならば以下のようになる。

「自分がねらった目が 7よりも先に出れば勝ち。7 が先に出てしまったらその時点でゲーム終了となり負け。ただし第 1投目で 7が出てしまった場合は、まだ本戦が始まる前なので負けにはならず (勝ちになる)、ゲームのやり直しとなる」

これがクラップス全般に言える大まかな一般論だ。もちろん例外的な賭け方もいくつかあるのでこの一般論がすべてに当てはまるわけではないが、とりあえずこのように覚えておいて実質的になんら問題はないし、この一般論を先に知った上でこの後の解説を読んだ方がはるかに早く全体像を理解できるはずである。

出目の大原則

クラップスというゲームをやる上で戦略上絶対に知っておかなければならない 「常識」 がある。それは、「どの目も同じ確率で出るわけではない」 ということだ。

クラップスでは常に 2つのサイコロが使用されるため、出る目の種類は 「2」 から 「12」 まで存在することになるが、それぞれの目の出る確率 (以下 「出現率」 と呼ぶ) は大きく異なる。

たとえば 「12」 はそれぞれのサイコロが [6と6] の場合以外にはあり得えないが、「7」 は [1と6]、[2と5]、[3と4] でもよい。さらに数学的に厳密に言うならば、その [1と6] はその逆の [6と1] とは別の事象であり、その結果、「7」 の出現率は 「2」 や 「12」 の出現率の 6倍高いことになる。

このような出現率の差の存在を理解せずにプレーすることは、トランプのカードの種類を知らないままブラックジャックをプレーするようなもので、あまりにも無謀である。
以下が各出目の出現率チャートで、全部で 36通りの出目のパターンがあることがわかる。つまり 「2の目」 や 「12の目」 の出現率は 36分の1、「3の目」 は 36分の2、「7の目」 は 36分の6、ということになる。

シューターの心得

サイコロを投げる人のことを 「シューター」 と呼ぶ。このシューター役はゲームに参加しているプレーヤーが順番で引き受ける。したがって、しばらくプレーしていると必ずこのシューター役の番が自分に回ってくることになるが (カジノ側が時計回りの順番でテーブルを囲っている各プレーヤーを指名してくる)、もしやりたくなければパスして隣のプレーヤーにこの役を譲ってもかまわない。

よくこのシューター役を 「親」 的な立場の者と勘違いしている人もいるが、そんな意味合いはまったくない。シューターはただ単に サイコロを投げ込む役をたまたまやらされている だけのことであって、ルール上なんら特権があるわけではない。つまり他のプレーヤーとまったく同じ立場でゲームに参加していることになる。(当たり前のことだが、ゲームに参加していない者、つまりお金を賭けていない者はシューター役をやらせてもらえない)

本来カジノ側がこのシューター役をやってもよいわけだが、それでは客側もスッキリしないだろうということで ( 「カジノ側はイカサマをやっているんじゃないか?! 」 と疑う客もいることだろう )、カジノ側の好意で客の代表者が投げさせてもらっていると考えればよい。
ちなみにこのシューター役は、第 2投目以降で 7を出してゲーム終了 (正式には 「シリーズの終了」 という) となるまで同じ者が担当することになっている。

なお、シューター役を引き受けた者がサイコロを投げ込む際に守らなければならない基本マナーが 2つある。ひとつは、両手を使ってはならないということ (上の写真はルール違反)。つまり必ず片手でサイコロを拾い上げ、そして片手で投げ込む (下の写真が正しい方法)。
もうひとつは、一度サイコロを握った手はクラップス台の外や他のプレーヤーの視界の外に出してはならないということである。
これら 2つのマナーは、ニセ物サイコロとのすり替えなどの不正行為を避けるために、参加者全員が最低限守らなければならない基本ルールであり、これを守らないとカジノ側から注意される。

なお使用するサイコロに関してだが、これはシューターが自由に選び出すことになっている。つまり、カムアウトロールの前にカジノ側が 5個ほどのサイコロをシューターの前に差し出してくるので、シューターはその中から好きな 2個を選んで投げる。
「自由に選べる」 と言っても、色もカタチも大きさもまったく同じサイコロの中から選び出すわけでなんら楽しい作業ではないが、これはあくまでも 「カジノ側が勝手に押しつけたサイコロではありませんよ」 というフェアプレー精神を示すための単なる儀式なので、めんどくさがらずに 2つのサイコロを選び出そう。