賭け方のバリエーション

3つ覚えれば十分

次の章以降に示したのが賭け方のバリエーションだが、それらすべてを覚える必要はまったくない。

なぜなら大部分は 「実戦で行うべきではない賭け方」 (確率論的に不利な賭け方) だからである。

 

ズバリ、覚えるべき賭け方はパスライン、カム、そしてその 2つに追加するカタチでかけるオッズ賭け、以上の 3つだけだ。これら以外は、覚える必要はないというよりもむしろ覚えない方がよい。
なお、ドントパス (またはドントカム) だけはたとえ実戦で使わないにしろ、いろいろな意味で勉強になるのでその存在と内容だけは理解しておいた方がよいだろう。

パスライン (PASS LINE)

第 1投であるカムアウトロールの前にこの PASS LINE に賭金を置く (写真右)。カムアウトロールで 「7」 か 「11」 が出ればその場で勝ちとなり、賭金と同額の払戻金 ( 1ドルの賭金に対して 1ドルの払戻金) を受ける。

逆に 「2」 か 「3」 か 「12」 が出ればその場で負けとなり賭金を失う。それ以外の数字の場合は、その目が 「ポイント」 となり、第2投目以降で 「7」 が出る前にその目が出れば勝ちとなり、「7」 が先に出ると負けでゲームは終了する。

もちろん第 2投目以降で 「2」、「3」、「11」、「12」 が出ても勝ちにも負けにもならない。とにかく第 2投目以降は、ひたすら 「ポイント」 が先に出るか 「7」 が先に出るかだけの勝負である。
このパスラインはクラップスというゲームにおける最も基本的な賭け方なので、絶対にマスターしておく必要がある。

カム (COME)

これはパスラインと基本的にはまったく同じで、唯一の違いはパスラインは最初の第 1投目、つまりカムアウトロールの時点でゲームに参加するのに対して、このカムは第 2投目以降の好きな時にゲームに参加するというだけの違いである。

具体的に例をあげて説明するならば、カムアウトロールで 「9」 が出たとする。

「ポイント」 は当然 「9」 になる。第 2投で 「8」、第 3投で 「10」、(この段階ではまだ 7 が出ていないので誰も負けていなし、カムアウトロール以降 9 も出ていないので誰も勝っていない)、その段階で Aさんは第 4投目からゲームに参加したくなってこのカムに賭けたとする (写真)。

この場合、Aさんは第 4投目で 「7」 か 「11」 が出れば勝ちで、「2」 か 「3」 か 「12」 ならば負け、そしてそれ以外の数字の場合は、その第 4投目の数字が 「あとから参加した Aさんだけのポイント」 となり、第5投目以降で 「7」 が出る前にその目が出れば Aさんの勝ちで賭金と同額が支払われれる。「7」 が先に出るとゲーム終了となり負けとなる。

このカムもパスラインと並んで最も重要な賭け方なので完全にマスターしておく必要がある。

プレースベット (PLACE BETS)

 テーブルの中央部に大きく書かれている 「4」 から 「10」 までの各個別番号に対する賭け。これはカムアウトロール以降いつからでも参加できるわかりやすい単純な賭けだ。

たとえばこの写真のように 「8」 に賭けた場合、「7」 が出る前に 「8」 が出れば勝ち、「7」 が先に出てしまえばゲーム終了なのでその時点で負けとなる。

このプレースベットは 「ポイント」 などに関係なく、ただ単にその数字に賭けるだけなので賭けそのものは非常に単純明快だが、払戻金の計算が少々複雑だ。
それは各目の出現率が微妙に異なっていることに起因している。つまり 「8」 よりも 「4」 の方が出にくいので当然その分当たったときの配当倍率は大きくなる。計算が複雑と言ってもカジノ側がちゃんと計算してくれるので特にプレーヤー自身がそれを覚える必要はまったくない。

ちなみにその配当倍率は、「4」 と 「10」 に賭けた場合が 5ドルの賭金に対して 9ドルの払い戻し (つまり 1.8倍)、「5」 と 「9」 に賭けた場合は 5ドルに対して7ドル (1.4倍)、「6」 と 「8」 に賭けた場合は 6ドルに対して 7ドル (1.16倍) が払い戻される (これらの配当倍率は 「何倍」 というカタチで覚えるのではなく、「いくらの賭金に対していくら」 というように覚えた方が半端な数が出ないので覚えやすい)。
したがって勝った場合の払戻金に複雑な端数が出ないように、これらのプレースベットに賭ける際は必ず 5の倍数の金額 (「4」,「5」,「9」,「10」 に賭ける場合)、もしくは 6の倍数の金額 (「6」,「8」 に賭ける場合) を置くのが常識である。つまりプレースベットの 「8」 に賭ける場合であれば、6ドルとか 18ドルを賭けるようにするということである。もちろん中途半端な金額を賭けても反則にはならないが、1ドル以下の端数の払戻金は切り捨てられてしまうルールになっていることが多いため自分が損をすることになる。

なおこのプレースベットはその出現率と配当倍率の関係上、 「6」 または 「8」 以外には賭けない方が得策だ。 「4」、「5」、「9」、「10」 はその出現率の割に配当倍率が十分でない。正確に言うと 「6」 や 「8」 もなるべく賭けない方がよい (後述するが、カム と オッズ賭けにした方がトク)。

ビッグシックス (BIG-6)

これも単純な賭けで、ただ単に 「6」 に賭ける賭け方だ 。

いつからでも参加でき、賭けた以降のロール (サイコロが投げ込まれることをロールという) で 「7」 よりも先に 「6」 が出れば勝ち、「6」 が出る前に 「7」 が先に出てしまうとその時点でゲームは終了で負けとなる。

 なおこの賭けはゲームの途中でいつでも賭けの継続を中止にして賭金を引きあげることが許されている。

ちなみに戦術的なことを言うならば、このビッグシックスに賭けることは得策ではない。なぜなら、内容的には前述のプレースベットの 「6」 に賭けることとまったく同じ賭けであるにもかかわらず、払戻金の配当倍率が 1倍、つまり 6ドルの賭金に対して 6ドルしか支払われないからである。
プレースベットの 「6」 に賭けて勝った場合の配当倍率は、すでに述べた通り 6ドルの賭金に対して 7ドルが支払われる。したがってこのビッグシックスに賭けるぐらいなら無条件でプレースベットの 「6」 に賭けるべきである。このビッグシックスに賭けるという行動は 「私は何も知らない初心者です」 と公言しているようなものである。
ではなぜこんな不利な賭け方が存在しているのか? それは実に単純な理由だ。数学的なセンスのない初心者プレーヤーからカジノが収益を上げるためである。クラップスにはこういったワナがあるので、勝つためにはルーレットと違いある程度の知識が必要ということになる。
なお最近ではこのビッグシックスとプレースベットの配当倍率の差の不条理を解消するために、ビッグシックスの配当倍率もプレースベットの 「6」 と同じように 6対7 にしようという動きもある。しかしもしそうなった場合、このビッグシックスの存在意義はなくなってしまう。いずれにせよ、このビッグシックスはもはや盤面上のデザイン的な意味合いしかないということを理解しておこう。

ビッグエイト (BIG-8)

ビッグシックスとまったく同じ。
違いは 「6」 に賭けるか 「8」 に賭けるかの違いだけ。つまりこれも 避けた方がよい賭け方 である。

ハードウェー (HARD WAYS)

これまでの賭けはすべてサイコロの 「目の合計」 だけを当てる賭けだったが、このハードウエーは [3,3]、[4,4] といったように 2つのサイコロの 「目の組み合わせ」 までも当てなければならない賭け方である。

当然当たる確率も少なくなるため当たった際の配当倍率は高くなる (各組合わせに対する配当倍率はテーブル上に書かれている)。

賭けの対象となっているのは [2,2]、[3,3]、[4,4]、[5,5] 以上 4種類のゾロ目だ。

このハードウエーもいつからでも参加できる。賭けた以降のロールで 「7」 もしくはゾロ目ではないその数字 (たとえば [3,3] の 「6」 に賭けていた場合は、ゾロ目ではない [1,5] もしくは [2,4] の 「6」 のこと) が出てしまうと負けとなり、それらの目よりも先にその目標のゾロ目が出れば勝ちとなる。

なお、賭けの対象となっているどの 4種類のゾロ目も出現率は同じであるにもかかわらず、[3,3] および [4,4] に賭けた場合の方が [2,2] 、[5,5] に賭けた場合よりも配当倍率が高い理由は (写真参照)、「負けになってしまうゾロ目以外のその数字」 の出現率が異なるためである。
 配当倍率の表記における 「10 FOR 1」 とは、元の賭金を含めて 10倍という意味なので実質的な儲けは賭金の 9倍にしかならない。つまり 1ドルの賭金に対して 9ドルが支払われるという意味だ。

 ちなみにこのハードウエーの賭けも、プレーヤーにとって非常に不利な賭けのため避けた方がよい。配当倍率が高いので一見おトクのようにも思えるが、実際の各目の出現率の低さに比べるとその配当倍率は低すぎる。

フィールドベット (FIELD BETS)

これは単純な一発勝負 ( 1 回のロールに限って有効) の賭けのため、どんな目が出ようが賭けた直後のたった 1回のロールで勝負は決まる。つまりそれ以降のロールはまったく関係ない。

 またこの 「フィールドベット」 への賭けはカムアウトロールも含めてどのロールからでも参加できる。

ルールは極めて簡単で、この 「フィールドベット」 に賭けた直後に振られるロールで、「2」、「3」、「4」、「9」、「10」、「11」、「12」 のいずれかが出れば勝ち、「5」、「6」、「7」、「8」 が出れば負けとなる。
なお勝った場合の配当倍率は 1倍 (つまり 1ドルの賭金に対して 1ドルの払戻金) だが、めったに出ない 「2」 と 「12」 が出た場合に限りボーナスとして賭金の 2倍が支払われる (写真参照)。また最近の高級カジノホテルにおいては、「 12 だけは 3倍払い」 というところも少なくない。( 「12」 の代わりに 「2」 を 3倍にしているカジノもある)

この賭けは、自分が勝てる目の種類が7種類もあるのに対して負けとなる目が 4種類しかないため、一見かなり有利なようにも見えるが、実はこれもプレーヤーにとってかなり不利な賭け方なので避けた方がよい。そのことは各出目の出現率チャートをよく見れば一目瞭然だ。

エニークラップス (ANY CRAPS)

これもいつからでも参加できる一発勝負の賭け。賭けた直後のロールで 「2」、「3」、「12」 のいずれかが出れば勝ちで、賭金の 7倍 (元金も含めれば 8倍) が払い戻される。それ以外の数字はすべて負けとなる。

出現率チャートをよく見れば勝てるチャンスは 36分の4、つまり 9分の 1 であることがわかる。したがってこの賭けも出現率の割に配当倍率が低い賭けということになる。

クラップス 2、3、12 (CRAPS 2、3、12)

この賭けはハードウエーと非常によく似た賭けだ。唯一のちがいはハードウエーが 「7」 が出るまで有効だったのに対し、この賭けは 1回限りのロールだけが勝負の対象となるという点である (つまり一発勝負)。

 「2」 か 「3」 か 「12」 のうちのいずれかの目に賭け、賭けた直後のロールでその目が出れば勝ち。出なければ負けとなる。

これらの目は出現率が非常に低い上 (たとえば、「2」 は [1,1] しかあり得ないし、「3」 も [1,2] と [2,1] しかない)、賭けた直後の1回限りのロールだけが対象となっているため当てるのはかなり難しい。その代わり当たった際の配当倍率も非常に高く設定されており、ちなみに 「2」 と 「12」 に対する配当倍率は 30倍 (元金も含めた倍率なので実質の利益は 29倍)、「3」 の場合でも 15倍 (同 14倍) となっている。それでも実際の出現率に比べるとその配当倍率は極端に低く、この賭けも絶対に避けた方がよい賭けと言える。

イレブン (ELEVEN)

「11」 という数字はなぜか 「クラップス」 と呼ばれる数字ではないので、前述の 「クラップス」 とは別扱いになっているが、この賭けそのものはクラップスの 「3」 に賭けることと内容的にも出現率的にも配当倍率的にもまったく同じ賭けである。

 したがって、このイレブンもいつからでも参加できる一発勝負の賭けで、賭けた直後のロールで 「11」 が出れば勝ち、出なければ負け、配当倍率は 15倍 (元金も含めた倍率なので実質利益は 14倍) となっている。もちろんこれも避けた方がよい賭けである。

ドントパス (DON'T PASS)

これはここまでに説明してきた賭け方とはまったく逆に、カムアウトロール以降で 「7」 が出てゲーム終了となると勝ち、という "あまのじゃく的な賭け方" である。

賭けの内容としてはパスラインのまったく逆と考えればよい。つまり第 1投目であるカムアウトロールの前にこのドントパスに賭け、カムアウトロールで 「7」 か 「11」 が出れば負けで、「2」 か 「3」 ならば勝ちとなる。

なお 「12」 だけは引き分けで勝負立ち消えとなる。それ以外の数字の場合はその目が 「ポイント」 となり、第 2投目以降で 「7」 が出る前にその目が出れば負けで、「7」 が先に出ればゲーム終了で勝ちとなる。
 もちろん勝った場合の配当倍率はパスラインの場合と同様 1対1 (1ドルの賭金に対して 1ドルが支払われる) だ。

なおこの賭けは確率論的な期待値は非常によく、勝ち負けのことだけを考えたら 「パスライン」 と並び最も有利な賭け方である。
 しかしまわりの多くの参加者たちの望み (カムアウトロール以降は 「7」 が出ないことを望んでいる) とはまったく逆の賭け方であるため、雰囲気が盛り上がっているときにここに賭けると場がシラけてしまう可能性がある。勝ち負けだけでなく雰囲気もエンジョイするのがクラップスというもの。したがって、よほどのあまのじゃく以外はここに賭けないのが普通だ。

ドントカム (DON'T COME)

これもあまのじゃく的な賭け方で、内容としては カムのまったく逆と考えればよい。

言い換えれば、ドントパスとほぼ同じで、ドントパスとのちがいは、カムアウトロールの段階で参加するかそれ以降に参加するかの違いだけだ。

カムアウトロール以降であればいつでもこのドントカムに賭けることができる。

そしてこれに賭けた直後の最初のロールで 「7」 か 「11」 が出れば負けで、「2」 か 「3」 ならば勝ち、「12」 だけは引き分けで勝負立ち消えとなる。それ以外の数字の場合はその目が 「あとから参加したそのプレーヤーだけのポイント」 となり、それ以降のロールで 「7」 よりも先にその目が出ると負け、その目が出る前に 「7」 が先に出れば勝ちとなる。勝った場合の払戻金はもちろん 1対1 である。

このドントカムもドントパスと同様、勝ち負けのことだけを考えたら非常に有利な賭け方ではあるが、場がシラけるので、周囲の情況によってはほどほどにしておいた方が無難だ。

エニーセブン (ANY-7)

これはとにかく 7が出ることだけを祈る最もあまのじゃく的な賭け方だ。いつからでも参加できるが、賭けた直後のロールだけが勝負の対象となる。

つまりこのエニーセブンは賭けた直後のロールで 「7」 が出れば勝ち、出なければ負けの一発勝負の賭けということになる。配当倍率は 5倍 (元金も含めた倍率なので実質利益は 4倍)。

このエニーセブンもドントパスやドントカムと同様、よほどのあまのじゃく以外はこれに賭けないのが普通だが、ドントパスに大金を賭けた際のカムアウトロールに対するリスクヘッジとして戦略的に利用されることはたまにある (たとえばドントパスに $1000 賭けた際、このエニーセブンに $200 賭ける)。もっとも、ドントパスに賭けること自体があまのじゃくと言えるわけで、やはり常識人はこれに賭けるべきではない。また出現率に対する配当倍率も非常に悪い。

その他の賭け方

クラップスにはここまでに説明してきた賭け方以外にも、「HOP BET」、「HORN BET」 などいくつか特殊な賭け方が存在している。

しかしそれらの賭け方はあまり一般的ではないということに加え、確率論的に非常にプレーヤー側にとって不利な賭け方であるため、あえてここでは割愛することとする。もちろんここで紹介した賭け方でも不利な賭け方は覚える必要はない。

むしろそれらは覚えない方がよいと言った方がよいだろう (覚えると実戦で実行してしまうため)。