ゲームの進行

ゲームの進行

バカラテーブルに座っている各プレーヤーは、前述の例で言うところの 「AさんかBさんかに賭ける」 ことになる。

(AさんとBさんの勝負が引き分けの場合は、賭金は動かないが、「引き分けになる」 という賭け方もある。この 「引き分けになる」 に賭けて、結果が的中した場合の払戻金は8倍。)

実際のバカラテーブルにおいては、このAさんのことを 「 PLAYER 」 と呼び、Bさんのことを 「 BANKER 」 と呼ぶ。

 (写真の赤丸がプレーヤー側に賭ける場合に賭金を置く場所、白丸がバンカー側に賭ける場合に賭金を置く場所)

「 PLAYER 」、「 BANKER 」 という表現を使うと、どうしても 「客側」 と 「カジノ側」 と考えてしまいたくなるが、そういう意味に解釈してもらっては困る。これはただ単に昔からの伝統的な名残でそのような呼び方になっているだけであって、今日のバカラにおいては 「客側」 とか 「カジノ側」 とかいう意味はまったくない。だからあえて誤解されないようにここまでわざわざ 「Aさん」、「Bさん」 という表現を使ってきたのである。

なお、自分の座席の前に書かれている番号にも特別な意味はない。ゲーム参加者たちの背番号もしくは座席番号とでも考えておけばよいだろう。

「ブラックジャックテーブルにはないのに、なぜバカラテーブルには座席番号があるのか?」 との疑問が湧いてくるかもしれないが、それはあとで述べる手数料の精算の際にだれがだれだかわからなくなってしまうことを防ぐためのものである。つまり、文字通りただ単に座席番号であって、ゲームの進行にはまったく関係ない。

[ 賭け方・進行 ]

実際のテーブルには横に長い線が引かれており、 「 PLAYER 」 さんが勝つと思ったら、賭金をその線の手前側に置き、「 BANKER 」 さんが勝つと思ったらその線の向こう側に置く。

参加しているプレーヤー全員が賭金を置き終えたら、ディーラーは 「 PLAYER 」 さん用の所定の場所と、「 BANKER 」 さん用の所定の場所にそれぞれ2枚ずつカードを配る。あとは基本的にはブラックジャックと同様、「 PLAYER 」 と 「 BANKER 」 がカードを引いたり引かなかったりして勝負をするだけである。

[ 勝敗の決着 ]

すでに述べた通り、カードの合計の下一桁が9に近い方が勝ちとなる。つまり、9が一番強く、その次に8、7、6と続き、0が一番弱い。

このようにバカラというゲームにおいては、一般の参加者はまったく何もする必要がない。やるべきことは賭金を置くという動作だけで、あとは結果を眺めている以外に何もやることはないし、何もやらせてもらえない。

 その結果、バカラはとにかくゲームの進行が速く (伝統的バカラにおいては、意味のない儀式があるためそれほど速くはないが)、負け出すとカネがいくらあっても足りないということになりかねない。もちろん勝つのも早いことは言うまでもない。  また、参加者が2人であろうが6人であろうが、カードが配られるのは 「 PLAYER 」 さんと 「 BANKER 」 さんだけなので、ブラックジャックと違い大人数が参加していてもゲームの進行速度はそれほど落ちない。とにかく単純でテンポが速いゲームと言えよう。

ヒット&スタンド

ブラックジャックにおいては、カードを引く (ヒット) か引かない (スタンド) かは各自プレーヤーが自由に決めることができるが (ディーラーにはその自由がないが)、バカラにおいては 「 PLAYER 」 も 「 BANKER 」 も自由に引くことができない。

[ ヒットまたはスタンドの規則性 ]

「 PLAYER 」 は最初に配られた2枚のカードの合計の下一ケタが、6以上であればスタンドしなければならないし、6未満であればヒットしなければならない。  また 「 BANKER 」 は 「 PLAYER 」 のヒット後の結果により、ヒットしなければならないか、スタンドしなければならないか、それぞれ細かく規定されている。 (詳しくは、別項 【 PLAYER・BANKER 側のヒット&スタンドチャートの表 】 を参照のこと )。

ただし、これらのヒットかスタンドかの規則を一般のゲーム参加者がわざわざ覚える必要はまったくない。

なぜなら、プレーしているのは自分ではなく、あくまでも 「 PLAYER 」 と 「 BANKER 」 だからである。また覚えたところでゲームの進行や結果になんら影響を及ぼさないことは言うまでもない。

戦略

ここまでの説明でもわかる通り、「参加しているプレーヤーは何もやることがない」 わけであり、やることがないということは戦法や戦術としての選択肢もまったくないということになる。

そして選択肢がないということは必勝法もないという結論に達する。

冒頭で述べた 「バカバカしいほど単純なゲーム」 という言葉の意味が、ここで改めてわかって頂けたことと思う。とにかくバカラは 「近寄りがたいほどむずかしい」 のではなく、「バカバカしいほど単純」 なのである。

戦略らしい戦略をしいてあげるならば、「引き分け」( 実際のテーブルには 「 TIE 」 と書いてある) には賭けないようにするということぐらいだろう。払戻金は8倍とかなり大きいのだがその発生率を考えると数学的な期待値は決してよくない。したがって必ず 「 PLAYER 」 か 「 BANKER 」 のどちらかに賭けるようにしよう。

手数料

「引き分け」 に賭けて的中した場合は賭金の8倍が払い戻されるが( つまり元々の自分の賭金も含めれば 9倍戻ってくる)、 「 PLAYER 」 に賭けた場合と 「 BANKER 」 に賭けた場合の払戻金は賭金の1倍である。

ということは、同じプレーヤーが同時に 「 PLAYER 」 と 「 BANKER 」 に同額を賭けた場合 (実際にそんなことをする者はいないが)、必ずどちらかが負けて必ずどちらかが勝つということになりカジノ側は損もしないし得もしない。( 結果が 「引き分け」 ということも当然あるが、その場合 「 PLAYER 」 や 「 BANKER 」 に賭けられた賭金は動かないのでこの際 「引き分け」 は便宜上無視する)。

つまりバカラに関して言えば、カジノ側の確率論的なアドバンテージは 「 PLAYER 」 や 「 BANKER 」 に賭けられている限りまったくないことになる。

これではディーラーの人件費もカジノの電気代も出ない。したがって、カジノ側はポーカーと同様、各プレーヤーから参加料を徴収している。そしてその参加料は、 「 BANKER 」 側に賭けて勝った人から払戻金の (つまり賭金と同額の) 5%を徴収するというようになっているのが普通だ。

なぜ 「 BANKER 」 側からだけ徴収するのかというと、勝率を数学的に厳密に計算すると 「 BANKER 」 側に賭けた方がやや有利になっており、その有利の度合いの差がちょうど5%ぐらいになっているからである。

なお、この参加料の徴収方法は各カジノによって異なるが、大きく分けるとその都度いちいち徴収する方法と、ディーラーが未回収分に相当する額の CHIP をテーブルの所定の位置 (参加者の座席番号と同じ番号が書かれたワク内など) に置き記録しておき、シャッフルの際や客が席を離れる際などに精算するという方法がある。現在ラスベガスのカジノで行われているミニバカラにおいては、ほとんど後者の方法が採用されている。

PLAYER と BANKER、どっちがトク?

誰もが知りたいことは、「 PLAYER 側に賭けるのと BANKER 側に賭けるのではどっちがトクか?」 であろう。

バカラというゲームにおいてはこの選択以外には何もやることがないので誰もがそのような疑問を持つのは極めて当然のことだろう。

結論から先に言うならば、「どちらに賭けてもほとんど同じだが、厳密に細かく計算すると、ほんのわずかだけ 「 BANKER 」 側に賭けた方が有利」、ということになる。

つまり言い換えれば、「 BANKER 」 側に賭けて勝つと5%の参加手数料を取られるが、「 BANKER 」 側が勝つ確率の方がその5%を差し引いて考えてもさらにほんのわずかだけ高いということである。

しかしこの差は限りなくゼロに近く無視できる程度のものなので、数時間プレーするだけならばまったく気にすることはない。ただし1週間ラスベガスに居座り続け毎日毎日このバカラだけをひたすらにやるというのであれば、「 BANKER 」 側に賭けた方が多少有利ということになる。長くやればやるほどわずかな確率の差も結果として現れてくるというのが統計学の理論というものである。

もっとも、「 BANKER 」 側に賭けた方が多少有利と言っても、それはあくまでも 「 PLAYER 」 側に賭けるよりも有利ということだけであって、1週間もやり続ければ必ず負けることは明らかである。

紙とペンに託すロマン

バカラというゲームにおいては (伝統的バカラであろうがミニバカラであろうが )、伝統的に (と言ってもミニバカラに伝統はないが) 各参加者が1回ごとの結果を紙に記録するという習慣がある。

つまり 「直近 20回の結果」 などを参考にしながら、その後の傾向を読み、次のプレーの結果を推理しようというわけである。数学的にはそんなことをやってもまったく意味がないのだが (そんなことで勝てるようなら世界中のカジノはとっくに倒産している)、多くの人が今でも記録を付けながらプレーしている。

したがって、バカラのテーブルに着席すると必ずディーラーが 「用紙と鉛筆はいりますか?」 ときいてくる。記録を取るぐらいしかプレー中にやることがないので、とりあえずはそれらをもらって記帳するのも悪くはないだろう。

おそらくこの習慣は、そんなことでもやっていないと退屈してしまうほど暇なゲームだったため発生したのではないか。また逆に考えれば、そんなことをやっていられるほど時間と金に余裕のあった大富豪たちばかりが楽しんでいたゲームということも言えるのかもしれない。

「5回連続して PLAYER が勝った場合は、次の 20回以内に必ず BANKER の7連勝がある」、「直近の 50ゲームのうちで BANKER の4連勝以上が1度もない場合は、近い将来必ず BANKER の8連勝が起こる」 などなど。過去何百年もの間、さまざまな 「必勝法」 のようなセオリーが現れては消え、その都度多くの人達が紙とペンを手にしながらそれらを実戦で試してきた。

もちろんそれらのどれも数学的根拠はまったくなく、勝敗結果はいつも気まぐれだったことは言うまでもない。それでも多くの伝説的なセオリーが今でも語り継がれ実戦されているところに、このゲームの不思議な魅力と偉大さがある。

そしてそれらの伝統的セオリーに混じって 「新作モノ」 も次から次へと現れては消え、「セオリーはきっとあるにちがいない」 と信じる大富豪ギャンブラーたちの探求心とロマンをかき立てているのもバカラの特徴である。

ゲームの内容があまりにも単純であるがゆえに、ギャンブラーたちはその人知の及ばぬゲーム結果に傾向性と連続性の存在を予感し、その探求についつい夢がふくらんでしまう。 「王様のゲーム」 と呼ばれてきたバカラには、時間と金に余裕のない一般庶民にはわからない何か不思議な魅力が潜んでいるのかもしれない。

ヒット&スタンドチャート

次の項に示すのが、「 PLAYER 」 側と 「 BANKER 」 側のそれぞれのヒットまたはスタンドの規則表であるが、これを見ればわかる通り、引くか引かないかの規則は 「 PLAYER 」 側と 「 BANKER 」 側でまったく異なり、それぞれ細かく決められている。

特に順番が後から回ってくる 「 BANKER 」 側の規則は、「 PLAYER 」 側の結果も条件にからんでくるためかなり複雑に規定されている。

しかしすでに述べた通り、一般のプレーヤーがこれらの規則を覚える必要はまったくなく、覚えても覚えなくてもなんらゲームの進行や結果に影響を及ぼさない。この規則表はあくまでも興味の対象として参考までに掲載したまでである。

PLAYER側のヒット&スタンドチャート

以下は 「 PLAYER 」 側のヒットまたはスタンドの規則表である。すでに述べた通り、一般のプレーヤーがこれらの規則を覚える必要はまったくなく、覚えても覚えなくてもなんらゲームの進行や結果に影響を及ぼさない。

この規則表はあくまでも興味の対象として参考までに掲載したまでである。

[ PLAYER 側 ]

▼ 最初の2枚のカードの合計の下一ケタが …
 0~5の場合:3枚目のカードを引かなければならない
 6,7の場合:3枚目のカードを引いてはならない
 8,9の場合:相手が8,9でない限り自動的に勝ち。
 つまり相手はカードを引くことができない。
 相手も8,9の場合はそのまま勝負

BANKER側のヒット&スタンドチャート

以下は 「 BANKER 」 側のヒットまたはスタンドの規則表である。すでに述べた通り、一般のプレーヤーがこれらの規則を覚える必要はまったくなく、覚えても覚えなくてもなんらゲームの進行や結果に影響を及ぼさない。

この規則表はあくまでも興味の対象として参考までに掲載したまでである。

[ BANKER 側 ]

▼ 最初の2枚のカードの合計の下一ケタが …
 0~2の場合:3枚目を引かなければならない。
 3の場合:PLAYER 側が3枚目を引かない状態
 ( つまり PLAYER 側の手が6,7の状態)の場合は
 BANKER は3枚目を引かなければならない。

 PLAYER 側が3枚目を引いてそのカードが
 0,1,2,3,4,5,6,7,9の場合は
 BANKER も3枚目を引かなければならず、
 PLAYER 側の3枚目のカードが8 の場合は
 3枚目を引いてはならない。
 4の場合:PLAYER 側が3枚目を引かない状態
 ( つまりPLAYER 側の手が6,7の状態)の場合は
 BANKER は3枚目を引かなければならない。

 PLAYER 側が3枚目を引いてそのカードが、
 2,3,4,5,6,7 の場合は
 BANKER も3枚目を引かなければならず、
 PLAYER 側の3枚目のカードが0,1,8,9の場合は
 3枚目を引いてはならない。
 5の場合:PLAYER 側が3枚目を引かない状態
 ( つまりPLAYER 側の手が6,7の状態)の場合は
 BANKER は3枚目を引かなければならない。

 PLAYER 側が3枚目を引いてそのカードが、
 4,5,6,7の場合は BANKER も3枚目を引かなければならず、
 PLAYER 側の3枚目のカードが0,1,2,3,8,9の場合は
 3枚目を引いてはならない。
 6の場合:PLAYER 側が3枚目を引かない状態
 ( つまりPLAYER 側の手が6,7の状態)の場合は
 BANKER も3枚目を引くことはできない。

 PLAYER 側が3枚目を引いてそのカードが、
 6,7の場合は BANKER も3枚目を引かなければならず、
 PLAYER 側の3枚目のカードが、
 0,1,2,3,4,5,8,9の場合は
 3枚目を引いてはならない。
 7の場合:3枚目を引くことはできない。
 8,9の場合:相手が8,9でない限り自動的に勝ち。
 つまり相手はカードを引くことができない。 
 相手も8,9の場合はそのまま勝負。